まぐたら屋のマリア/原田マハ
東京の老舗高級料亭で働いていた主人公、紫紋。
ある事件があり、後輩が罪を追って自殺する。
そこから紫紋は、遠くへ逃げようとバスに乗り込み、見知らぬ土地、「尽果」へと辿り着く。
海と山、空、道路しかないような所だった。
崖っぷち古びた小屋を見つけ、それに向かってひたすら歩いた。
ついに小屋に着くと、そこには木の看板があった。
そこには「まぐだら屋」と書いてあった。
空腹だった紫紋は一銭も持っていないことも忘れ、定食を食べた。
その定食は彼の心を動かし、この食堂で働くことを決めた。
そこで働いていたたった一人の女性、マリアこと有野まり との生活が始まる。
老舗料亭で働いていた頃の夢は、母に料亭に招き自分の料理を食べてもらう事。
東北にいる母のために紫紋はただひたすら頑張った。
が、ある事件があり今は全く知らない土地の食堂の料理人。
壮絶な過去を抱えたマリア、急に倒れこんできた丸孤、絶対的存在の女将…
寓話的でありつつも、生きる勇気をもらえ、時に涙するような物語。
原田マハの世界に完全に引き込まれた作品。
様々な料理が登場し、読みながら想像し、「食べてみたいな」と何度思わされたことか。
登場人物みんなの過去が明らかとなり、真実を知ることとなる。
皆生きることを諦めようとした。しかし希望を持ち、今を生きている。
読んだ後は強い気持ちで満たされた。